近江歴史回廊倶楽部

歴史解説・紹介

   塑像寂室元光像 (県指定文化財)
  
 〜琵琶湖文化館蔵品紹介(その3)〜

 寂室元光(じゃくしつげんこう)は、東近江市永源寺高野町にある臨済宗永源寺派本山永源寺を開いた禅僧である。

正応3年(1290)、美作国英田郡高田村(現 岡山県真庭市)に生まれ、貞治6年(1367)9月1日、78歳で遷化した。禅宗の例にならい、遺誡と遺偈を記したあと、持っていた筆を放り投げて息絶えたという。

康暦元年(1379)、寂室の13回忌が営まれた。この時開眼法要が行われたのが寂室和尚坐像(重要文化財、永源寺所蔵)である。

寂室は曲ろくの上に結跏趺坐し、両方の手は軽く握って膝上に置き、右手に警策を執る。口元には深いしわが刻まれており、その表情は厳しくも優しくもあり、寂室の人柄を伝えている。
数少ない中世の塑像であり、製作年も明らかであることから大変貴重なものとして知られる。

 文化館が所蔵するのは、この重文寂室和尚坐像の模造品である。

       

昭和58年(1983)の修理時に明らかとなった内部の構造や技法に基づいて県教委により制作された。
構造は「井」の字形の木枠に小材や曲げ材を荒縄で巻いたものを加えて作った心木に塑土を盛って形を作ったもので、表面は布張りを施した上に黒漆を塗り重ねて彩色している重文の原本と同様の素材・構造とし、概観は褪色が進んだ現在にあわせて復元されている。

 模造品であったとしても、それが原本と同じ素材、技法、構造で作られたとすると、それは数百年後には今われわれが見ている文化財と同じ範疇で文化財として取り扱うことが可能になる。

そして、模造品の制作過程における研究、試行錯誤は、未知の技術や文化を知る貴重な機会となってわれわれに大きな実りを与えてくれるのであり、これが更なる文化財の研究、保存、活用へとつながるのである。

模造寂室像は、こうした考え方に基づいて制作された模造品の早い時期の例であり、れっきとした博物館資料なのである。


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