近江歴史回廊倶楽部

歴史解説・紹介

  湖の国の名宝展
   
〜湖の国の名宝が大宰府へ〜

   

今年の6月、滋賀を代表する仏教美術の数々が福岡県へ旅立ちました。太宰府天満宮の横にある九州国立博物館(写真下)で展示公開されるためです。

滋賀県に所在する国宝や重要文化財の数が全国で4番目ですが、その指定文化財の中心は仏教美術です。しかし、これまで「近江の仏教美術」をテーマにした展覧会が滋賀県外の博物館で開催されたことはありませんでした。

 「滋賀の文化財は豊かで、素晴らしいのだけれど・・・。」
 滋賀県の文化財に興味をお持ちの方なら、一度は耳にされたことがあるフレーズではないでしょうか。

滋賀の文化財が全国的に優れていることを認めた上で付いてくる無言の「・・・」。敢えて申し上げるなら、「京都や奈良の影に隠れてしまっている。」というようなことではないでしょうか。

 私が勤務している県立琵琶湖文化館は、仏教美術をテーマに取り組んでいる博物館です(平成20年4月から休館中です)。

仏教美術は「何しろ難しい。」「高尚すぎて自分にはわからない。」と敬遠されてきました。
近年、ようやく若い人たちの間で仏教美術に対して興味を持つ方が出てきましたが、これも今のところ仏像が中心で、それ以外の分野のものについてはまだ垣根が高いようです。

それでも、京都や奈良の文化財であれば、見に行こうと思ってしまう・・・この違いは一体何なのでしょうか。

 滋賀の文化財の特徴は県内全域に素晴らしい文化財が存在することであり、それらの文化財は近江に住まう人々が守り伝えてきたのです。

県内全域に素晴らしい文化財が存在するということは、逆に言えば多くの仏に出会うためにはそれだけ多くの寺院を時間をかけて回らなければなりません。
好きな言葉ではないのですが、"効率が悪い"と言われることがあります。それでも滋賀に足を運んでいただくためには、滋賀の文化財の素晴らしさを知っていただくしかありません。

 九州国立博物館で平成22年6月11日から開催されている「湖の国の名宝−最澄がつないだ近江と太宰府―」は、まさに滋賀の文化財を紹介するために企画された県外初の展覧会です。

                                           〔湖の国の名宝展ポスター〕
琵琶湖文化館の館蔵品や寄託品の中から、国宝4点、重要文化財48点、県指定文化財49点を含む105点を公開しています。来館者からは「滋賀にこんなものがあるなんて知らなかった。」と滋賀の文化財の魅力を見直していただくような発言がありました。

また、「この展覧会の次の巡回地は?」「東京にも来るのですか?」と全国各地で行われる展覧会だと思われる方、あるいはもう一度見たいと思われる方もありました。

「滋賀、滋賀」と連呼されていた中国系の団体もありました。展示室で見学されている人を見ていると、滋賀県の仏教美術が多くの人に受け入れられていく様子がひしひしと伝わってきました。

琵琶湖文化館のホームページ(http://www2.ocn.ne.jp/~biwa-bun/)にも、展覧会を見に行った感想が寄せられています。

 展覧会会場は、空間構成、照明ともに荘厳なものに仕上がっています。これだけ美しく展示された滋賀の文化財の数々を見るのは、初めてといっても過言ではありません。

そして、展示室にはもう一つの工夫が凝らされています。
実は、文化財写真家の寿福滋さんが撮影された滋賀の四季折々の風景の大きな写真を展示しました。

このような自然や風土の中で文化財が守られてきたのだ、ということをより印象的にし、滋賀県のイメージを具体化する効果があります。
琵琶湖の写真の前には休憩用の椅子が並べられており、そこに人が座るとまるで湖畔にたたずむ人のようにも見えます。

出品されている文化財だけでなく、展示室全体の雰囲気も楽しんでいただけるかと思います。
 この展覧会は、9月5日(日)まで福岡県太宰府市の九州国立博物館で開催中ですので、ご都合のよろしい方は、ぜひこの機会に近江の文化財の晴れ姿をご覧いただければと思います。


                                    (琵琶湖文化館学芸員 井上ひろ美)       

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