近江歴史回廊倶楽部

歴史解説・紹介

 琵琶湖を世界遺産に(その二)
    「近江水の宝」の選定



 今回は、琵琶湖の文化遺産としての価値を顕在化させるための取り組みを紹介したい。

 去る7月6日、ユネスコ世界遺産委員会は、日本が推薦した「平泉の文化遺産」について、"登録延期"とすることを決めた。

日本にとっては初の落選である。詳述することは避けるが、「平泉の文化遺産」の構成は、中尊寺を始めとする史跡、名勝、建造物等を「文化的景観」の概念で連結させたものであるが、単に、点と点を線で結んだだけという感が否めない。ユネスコの世界遺産の構成要素に対する要求は年々高度化している。

最初は単体の資産で事足りたものが、複数の資産構成に、さらに資産群を結びつけるコンセプトの提示が求められ、「熊野古道」、「石見銀山」はこれに対応し、世界遺産登録を果たした。
しかし、今回、「平泉」の落選により、これだけではなく、コンセプトを具現化する面的な広がりに対する保全が登録要件として求めらていることが明確に示された。

 現在、国内には8件の暫定リスト登録物件があるが、何れも「平泉」の資産構成様態を越える物件はない。
すなわち、現状では、世界遺産に登録される可能性の高い物件は無く、何れもが、コンセプトや資産構成に対する大幅な見直しが必要となるであろう。

このような状況の中にあって、厳しい要件(世界的な普遍的価値を示すコンセプトを表す資産群が広く面的に保全されること)を満たし得る文化遺産は、暫定リスト搭載には至ってはいないものの「琵琶湖」(過去1万年以上、そして永遠の未来まで続く自然と人類の共生。

このことを示す歴史遺産、生活文化、文化的景観の濃密な分布と、これらの琵琶湖を核とした面的な保全)の他、見あたらないのではないだろうか。

 「平泉」の巻き返しに大いに応援するものではあるが、琵琶湖の世界文化遺産登録にとっては、大きな追い風が吹いてきた。 しかし、ここに大きな問題がある。

それは、「琵琶湖の文化遺産的な価値に着目し、この普遍的な価値を具体的に提示するための取り組みが、殆ど行われていない。」という事実である。

いわば、「琵琶湖」巨大な宝石の原石であるが、この本来の輝きを引き出すための作業が行われていないのである。或いは、「琵琶湖」が宝石の原石であることすら、県民には認識されていないのかもしれない。
 
   写真は海津橋板

 まず、「琵琶湖」が持っている文化遺産的な価値に対する認識を、県民と行政が共有することから始める必要がある。何とも迂遠な取り組みのように見えるが、県民の多くが、潜在的に感じていた想いを引き出すだけの取り組みである。

 そこで、滋賀県教育委員会では、琵琶湖や水に関する文化遺産現況を把握し、この中で後世に伝える価値の高いものを「近江水の宝」に選定して顕在化させると共に、これを地域に還元する取り組みを今年度から始めた。

選定に際しては、学術的な調査の他、県民から寄せられた文化遺産に関する情報も参考としたい。

このため、県民に水に関する文化遺産(「近江水の宝」)情報提供を呼びかけているところである。読者におかれても、是非、この取り組みに参加していただきたい。読者各位が紹介した「近江水の宝」が、やがては、世界文化遺産の構成要素となるかもしれない。


滋賀県教育委員会文化財保護課 大沼芳幸



       

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