近江歴史回廊倶楽部

歴史散策・随想


  国宝十一面観音を訪ねて


平成22年3月18日(木)に8人で、まさに青春の18切符を使っての国宝3体、重文1体の観音めぐりをいたしました。その行程は

山科→大阪→久宝寺→柏原→道明寺(国宝:木造十一面観音菩薩立像)→応神天皇陵・誉田八幡宮→仲哀天皇陵→葛井寺(国宝:脱活乾漆千手観音坐像)→柏原→奈良→木津→三山木→大御堂観音寺(国宝:木心乾漆造十一面観音立像)→寿宝寺(重文:木造十一面千手千眼観音立像)→三山木→木津→奈良→京都

というあまり地理に詳しくない私としては大変な行程に思えましたが、観音の御開帳はそれほどの機会のないことと参加を申し込みました。当日の天気予報は午後から雨になりますが日中は夏日を記録するだろうとの予報。

道明寺は参道の蕾の膨らんだ枝垂桜が優しく気持ちをほぐし、山門をくぐると大きな楠木、線香の絶えない大きな香呂の脇のきれいなサンシュユの黄色い花、蕾がはじけそうになっている花梨が静かに我々を迎えてくれました。

御本尊開帳というと、いつもだと遠くの暗がりに浮かぶお顔を見るというのが多いのですが、本当に目の前まで進んで見詰められるようにしつらえてありました。

その姿は本当に優しい"み姿"、自然と手を合わせたくなるような雰囲気、許されるならばいつまでもそこに居て眺めていたい気持ちにさせる"み姿"でした。国宝だからとかではなく、美しさの真髄というか本物の美にめぐりあったように思えました。

大変に良いものを見た満足感の中で、予報通りの暑さの中、次の予定である誉田八幡宮をお参りして、応神天皇陵をぐるっと回って、その日の1万歩のほとんどを費やして、葛井寺(ふじい寺)に向かいました。

葛井寺の二天門をくぐり、桜、松に囲まれた参道を通り、18日の縁日にはご開帳されると言う本尊、国宝脱活乾漆千手千眼十一面観音を拝観しました。

ご住職の説明によると脱活乾漆造りのため軽く、災害時に避難をしやすく、製作年代(1300年前)のものがそのまま残されているとのこと。

この仏様は経文通りに実際に千手あるそうで、造像時の信仰の厚さ、そして、千数百年間の長きにわたり人々に守られてきた信仰の厚さがうかがわれます。

ご住職の説明に加え、本尊の置かれた裏側は博物館風にしつらえられ、ボランティアの方が丁寧に説明をしてくれていました。またの機会にぜひゆっくりと伺いたいものです。

お寺は縁日ということで出店が沢山あり賑わっておりましたが、町のアーケードを歩きながら、この門前町の人々が、葛井寺と共に感謝の気持ちを持って暮らしている雰囲気が良く分かりました。

そこから電車とタクシーを乗り継いで、大御堂の観音寺にうかがいました。かつては七堂伽藍が並んだ大寺と伺いましたが、今は国宝の木心乾漆十一面観音を見守る御堂と丁寧に整えられた庭のみというさびしい形でした。

しかしながら、その仏様は等身大の大きさを持つ素晴らしいものでした。多くを語るよりも絵ハガキ(写真左)を購入したので、掲載しておきますので、それぞれに感じていただきたいと思いますが、何よりも、これを間近に見ながら、好きなだけそこに居られる幸せの様なものを感じました。

このお寺はいつでもご開帳していると言うことでしたので再訪問をしたいポイントのひとつと思いました。

その後、寿宝寺の十一面観音を拝観に行きましたが、この観音さんは明るいところで見た時はきつい顔つきですが、暗くした中で見ると本当に優しいお顔になるという陰影をうまく使い分けた造りになっていて珍しさを感じました。

4時過ぎになって、予報通りにポツポツと降り出した雨の中、電車に乗ることができました。雨に救われたのも観音様の御利益か。どなたかが言われていましたが、これだけ、観音さんにお会いし、お願いをしたら地獄に落ちるわけがないよな、と。

地獄に行かなくなったかどうかは別にして、人に迷惑をかけるようなことや、こせこせと心煩わして、こぜわしく動きまわることをしなくなったような気がしてきました。

洗心!という言葉がありますが、そんなことが分かるような気がしてきました。女性陣が"一の谷"の歌を歌い始めました。なぜ今一の谷の歌なのかは別にして、公達(きんだち)あわれ、という歌詞の雰囲気が今の私の気持ちにスーと入り込んできて、思わず私も口ずさんでいました。

そうです、美の真髄を見たような気がしていて芸術的に仏像を見てきたつもりが、徐々に信仰心に目覚めたような私を感じて、おやおや!何となくボーとして見つめる窓の外、雨がきつくなってきました。確かにご利益かもしれません。京都行きの奈良線の中、青春18切符の心豊かな旅でした。

<参考情報>
1)道明寺:
・ 縁起:菅原道真公が信心込めて手ずから刻まれた像を御本尊とする古義真言宗の尼寺。
・本尊:十一面観世音菩薩立像(国宝)

2)葛井寺(ふじいでら)
 ・縁起:聖武天皇勅願によるかつては2km四方の七堂伽藍。西国33所巡礼第5番札所。
 ・本尊:十一面千手千眼観世音菩薩坐像(国宝)。神亀2年(725年)、春日仏師親子にて作造(脱活乾漆造り)、3月18日に入仏開眼法要、行基法師が導師。聖武天皇も自ら臨席。秘仏、但し、毎月18日と8月9日の千日参りに開扉。

3)大御堂観音寺
 ・縁起:天武天皇勅願により義淵僧正が開基、さらに聖武天皇御願により良弁僧正が伽藍を整備。興福寺別院、法相三論華厳等を兼学、普賢教法寺と称し尊信を集る。
 ・本尊:木心乾漆十一面観世音菩薩(国宝)。天平16年(744年)の安置。

4)寿宝寺
 ・縁起:文部天皇勅願により慶雲元年(704年)に創建。
 ・本尊:重文十一面千手千眼観世音立像

5)関西の十一面観音の国宝7件
・聖体寺(桜井)・観音寺(田辺)・法華寺(奈良)・向源寺(高月)・室生寺(宇陀)
・道明寺(道明寺)・六波羅蜜寺(京都))


                                                (高宮)


  

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