近江歴史回廊倶楽部

歴史散策・随想


  柿・・・西村早生


日本の秋の風景というと、たわわに実った柿の木のある景色を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
秋の果実の代表ともいえる柿、カキノキ科カキノキ属の落葉高木で、千以上の品種があるとされる。そして大まかには渋柿と甘柿に分けられるが、甘柿は渋柿の突然変異種と考えられていて、日本特産の品種である。

柿は弥生時代以降に桃、梅、杏などとともに栽培種が大陸から伝来したものと考えられ、「古事記」や「日本書紀」に柿の名前が記されており、平城京跡の遺構からたくさんの柿の種子や柿の値段を書いた木簡が出ていることから、奈良時代には作物として流通していたと考えられる。 

ことわざに「柿が赤くなると医者が青くなる」というように豊富なビタミン類とミネラルが栄養価摂取の低い時代では医者いらずの万能薬、柿渋を使った建材や日用品への利用など重宝されていたし、なんといっても子どもの頃、自然のおやつだった思い出を持つ方も多いだろう。
さて、大津市坂本の柿園で自然交雑の実生から発生し、1960年に品種登録された「西村早生」という柿がある。(写真上)

形は富有柿に似ているが少し小ぶりで一本深い縦溝が入る特徴があり、種子が3個以上入らないと甘柿にならないが、食味は硬めでさっぱりとした甘さのおいしい日持ちの良い品種である。

そして、際だった特徴は他の品種に先駆けて成熟し、甘柿の早生として収穫され流通することである。今でこそ、渋抜きされた渋柿が早くから出回るが、1960年頃は最も早く食べられる柿として人気があった。

今でも、岐阜県・福岡県・和歌山県で多く栽培されているが、滋賀県では高島市今津町深清水で約10トンが収穫され、10月1日から25日にかけて大津市青果市場に出荷される。地域の道の駅などで販売する農家もある。

70年近く経た西村早生の原木(上の写真)は以前の区画整理で近くの農園に移植されたが、手厚い手入れを受け今も元気に実をつけている。しかし、原木は品種登録された頃と樹高は大して変わらず、2mほどでしかない。穂木から増やされた子や孫の木の方がよほど大きくなっているのは不思議である。

このように広く栽培されている品種だが、原木が大津市坂本にあるということを知らない方が多いのではないだろうか。

他の品種の原木では、県指定の天然記念物になり、原木保存会などが守っていくなどしている所が有る。

西村早生ももっと多くの人々に知って味わってもらいたい。秋の風景から柿の木がなくならないよう、特に原木は記念物指定して大切に守ってもらいたいと願っている。
なお、原木を持つ西村柿園の柿は大津市坂本4丁目の西弥酒店で売られるので、ご縁があれば味わってみてください。



                                                (中田)


  

無断転載を禁じます Copyright(C) 2005 Oumi Rekishi Kairou Club. All Rights Reserved.