近江歴史回廊倶楽部

歴史散策・随想


 
 総会時の研究発表を拝聴して


病気療養で各種事業への参加がままならないなかで、近江八幡市で開催された当倶楽部の総会に出席させてもらい、例年どおり研究発表を拝聴し感銘をうけたので、その感想を述べさせていただきたい。

発表は、ご案内のとおりまづ小山昭三さまから「明智光秀謀反後の謎」というテーマで、知将と言われた明智光秀が主君織田信長を討つに至った背景、本能寺の変後、彼がとった行動とその不可解な事柄を見事に浮き上がらせたお話を披露され、敬服しながら拝聴した。

つぎは高橋正泉さまから「高時川餅ノ井『井落とし』の歴史」というテーマで、高時川上流の水利慣行についてのお話を承った。この水利慣行をめぐっては、同氏がまとめ」で述べられたとおり、現在では国、県営農業水利事業ですっかり解消され、上、下流の受益者がそれぞれ円満に農業を営まれ「めでたし、めでたし」である。

とは言うものの、国、県営事業の着手に当たって、この『既得権』を新しい国、県営事業費の負担割合に結びつけたいという主張がなされ、先祖の歴史を込めた関係者は、事業費の均等負担案にそう簡単に了解する訳にはいかず、立場上困惑され結局、事業の完成間際まで湖北土地改良区ならびに関係者が協議に協議を重ねられ、私も県の立場でその席に列席した経験から同氏の発表を興味深く拝聴した。

 県下の主要河川では、大なり小なり水利権をめぐる争いは必然で、今日では「昔話」になっているが、人命をかけた争いが毎年繰り返された事例は、枚挙にいとまがない。

私の手元に犬上川の「一ノ井・二ノ井両井郷の昔話」(昭和31年8月31日 犬上川沿岸土地改良区発行)という小冊子があるが、内容は壮絶なものである。しかし、琵琶湖総合開発事業を契機に各河川ごとに新しい水利事業とこれに伴うほ場整備事業が施行され、今日では合理的な施設によって末端水田まで導水が可能となり、昔はA集落とB集落は水利紛争が尾を引き絶対に縁組がないという事例を聞いたことがあるが、現在はどことも水不足による争いは根絶され、平和な農村に生まれ変わった。

しかし、便利になった水利の陰には、先祖が血を流した歴史が秘められていることを自覚し、これを子孫に伝え、水資源の有り難さに感謝しなければならないと思う。
 末筆ながら発表いただいた小山昭三、高橋正泉両氏に深甚なる敬意を表します。

(糠)



  

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